桜作戦は失敗であった。
30日(水)の松崎は、歩くだけで汗ばむくらいの初夏模様だったが、肝心の桜といえば満開には程遠い状況であった。那賀川沿いの開花率は大凡20%程で、被写体としてはお話にならないレベル。出掛ける前に豊崎ホテルへ確認の電話を入れておけばよかったのだが、逸る気持ちは抑えることができず、
――― 南伊豆は春真っ盛り!
なんて勝手に思い込んで突っ走ったのが失敗だった。唯、松崎の“春真っ盛り!”は偽りでなく、海の光、そよぐ風、そして咲き始めた大規模花畑の花々等、町の彼方此方に春を象徴するものが溢れかえっていたのだ。

いつものように港へ車を置き、那賀川河口から街中方面へゆっくりと歩いてみた。
平日なのに観光客と思しき人達といたるところですれ違う。恐らくJRの駅張りポスターで、観光地「松崎」が大きくクローズアップされてから訪れる人たちが増えたのだろう。彼らをよく観察すると、“団塊の世代”と思しき夫婦者が目立つ。誰に邪魔されることもなく、これから始まる第二の人生を謳歌するのだ!
商店街へ差し掛かると、この町には不似合いなブラックスーツに身を包んだ男性二人とすれ違った。
――― 葬式か?!
案の定、商店街の一角で通夜をやっていた。
葬儀場の前を通過する際に、奥まった祭壇へ目をやると、恰幅の良い年配男性の写真が飛び込んできた。
そのまま歩いていくと殆どの商店が休業していることに気付く。田舎にありがちな「町を挙げての…」であろう。
――― ん?、まてよ!
松崎へ寄ったら絶対に買って帰ろうと思っていた、「黒米焼酎・百笑一喜」のことが急に心配になり、慌てて酒屋へ行ってみると、やはり店は閉まっていた。これにはちょっとがっかり。
この百笑一喜、黒っぽいボトルからは想像し難い、爽やかな飲み心地がとてもナイスな一品なのだ。
何となく今日はついてない。
おまけに葬儀場の線香の匂いを嗅いだとたん、松崎で食事をする気はいっぺんに吹き飛んでしまい、撮影も中途半端のまま、とにかく町を出ることにした。
昼を過ぎた。腹は確実に減っていたので、昨年“小鯵寿司”を食した宇久須へ行って食堂を探すことにした。
――― 今日は新鮮な刺身でも食べるぞ!
と、張り切って自宅を出た筈なのに、なぜか味濃いものが欲しくなる。前からその辺にあったことだけは覚えていた、R410に入って直ぐ左側にある中華料理屋へ入ってみることにした。
ちょうど昼時とあって、店内はほぼ満席の大盛況。
――― 人気の店なのかな?
注文したタンメンには期待が掛かった。
しかし待たされること20分以上。これだけ混んでいるのだからしょうがないよと、自分を納得させようとするが、気分は既に下降線。
先ずはスープを飲んでみる。
――― 至極普通。
何の変哲もない、ごく普通の塩味。
それじゃ次は麺だ。
――― 随分と細い面を使っているな、でも食感は在り来り。
食べ始めはそんなところだったのだが、その後がいけなかった。
私の食べる速度は決して遅くはない。ものによっては速い方なのだが、
そのタンメンを半分程平らげた頃には、何と“熱湯入れて3分”のカップ麺を、誤って5分も経ってしまった状態とほぼ同じになってしまったのだ。腰のなくなったフニャ麺と、しゃきっとした野菜では余りにもバランスが悪すぎる。
後味悪く店を出る。
――― やっぱりついてない。今日は引き上げよう。
仁科峠越えで湯ヶ島へと向かった。
タイトなワインディングを延々と走っていると、体が左右に振れ確実に腰へのダメージが蓄積していく。余談だが、こんな峠道ではバイクの方が全然楽だし面白い。
疲れがピークに達したときだ。突然「ゆ」の看板が目に入った。仁科峠からは持越川沿いに下ってきたのだが、その温泉は山の斜面が切れた川向うに忽然と姿を現したのである。迷わなかった。車を駐車場に入れると、早速暖簾をくぐってみた。
温泉宿は「いずみ園」という。日帰り温泉をうたい文句にしている安価な宿だ。受付で入浴料の700円を払う。そのまままっすぐ廊下を歩くと、突き当たりが男湯になっている。手前に内湯、その先が露天という何の変哲もない配置なのだが、入浴客が少ないせいもあり、とてもリラックスして源泉掛け流しを堪能できたのだ。一時間半も居ただろうか、おかげで腰の痛みも随分と楽になった。
桜狩は思わぬ結果となってしまったが、今回もまた一つ穴場を見つけることができ、結果はAll rightである。
- 2007/04/05(木) 21:29:07|
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